歯のコラム
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噛み合わせが悪いと歯の寿命が縮む理由|詰め物が取れる・歯が割れる方へ
2026.05.15
監修:京橋歯科医院 院長|東京都中央区京橋|日本口腔インプラント学会・矯正研究会・EXDI所属

「歯が割れてしまったので、つめものを作り直したい」という患者さんが来院されることがあります。
お話を伺うと、「特に強く噛んだわけでもないのに、気づいたら欠けていた」とおっしゃいます。レントゲンを撮っても虫歯はなく、なのに歯が割れている。
こういうケースの多くは、噛み合わせに原因があります。虫歯でも歯周病でもなく、毎日の「力のかかり方」が歯の寿命を縮めていたということです。このコラムでは、噛み合わせと歯の寿命の関係をお伝えします。

噛み合わせが悪いと、なぜ歯の寿命が縮むのですか?
人間の噛む力は非常に強く、奥歯では体重に近い力がかかるとされています。この力が28本の歯全体に均等に分散されていれば問題ありません。しかし噛み合わせに問題があると、特定の歯だけに過剰な力が集中し続けます。
毎日の食事、仕事中の食いしばり、睡眠中の歯ぎしり——これらすべての場面で、特定の歯だけが必要以上の力を受け続けると、どんなに丈夫な歯でも、いずれ欠けてしまったり割れてしまったりします。
歯が欠ける、ヒビが入る、根が割れる——これらは「突然起きたトラブル」ではなく、長年かかってきた力が限界を超えた結果です。歯の寿命は噛み合わせによって大きく左右されてしまいます。
詰め物が取れる・歯が割れるのが繰り返す場合、何が原因ですか?
「また詰め物が取れた」「また同じ歯が欠けた」という経験のある方は、噛み合わせの問題が隠れている可能性があります。
詰め物はなぜ外れるのでしょうか。単純に接着力の問題だと思われがちですが、噛み合わせに問題がある場合、詰め物に対して設計外の方向から力がかかり続けます。どんなに丁寧に接着しても、過剰な力には限界があります。
歯が繰り返し欠けるケースも同様です。歯そのものが弱いのではなく、その歯に集中している力が強すぎるということです。この根本原因を解決せずに詰め直しや作り直しを繰り返しても、同じことが起きる可能性が高いです。
噛み合わせの問題は、なぜ自覚しにくいのですか?
これが最も厄介なところです。
噛み合わせの異常は、痛みとして現れるまでに長い時間がかかります。歯が少しずつ削れていく、じわじわとヒビが入っていく——このような変化は日々少しずつ進むため、本人が気づきにくいのです。
また、人間の感覚は「慣れ」によって異常を正常として受け入れてしまいます。「なんとなく噛みにくいけど慣れた」「詰め物が高い気がするけどしばらくしたら気にならなくなった」——これは感覚が正常化したのではなく、体が歪んだ状態に適応してしまっているということです。適応している間も、特定の歯への過剰な力は続いています。
噛み合わせが悪いことに気づくサインはありますか?
以下に当てはまるものがあれば、噛み合わせの問題が隠れている可能性があります。

これらは「歯が弱いから」ではなく、「力のかかり方がおかしいから」起きていることがほとんどです。歯の寿命を守るためには、こうしたサインを見逃さないことが大切です。
保険診療では、噛み合わせの診断はできないのですか?
正確に言うと、保険診療の範囲内では全体的な噛み合わせの診断に対する診療報酬が設定されていません。
保険診療では「この歯が虫歯だから削る」「この歯に詰め物をする」という1本単位の治療に報酬が設定されています。しかし、噛み合わせ全体を診断するには歯の模型を作り、顎の動きを再現する器具に取り付け、現在の力のかかり方を分析するという工程が必要です。この工程は時間も経験も必要ですが、保険点数がありません。
結果として、噛み合わせに問題があっても「1本ずつ治療する」流れになりやすく、力の根本原因が解決されないまま治療を繰り返すことになってしまいます。1本治したら隣の歯が割れた、また治したら今度は反対側が痛くなった——こういったケースは、噛み合わせという原因を放置したまま結果だけを処理し続けているということになってしまいます。
治療を繰り返すと、なぜ歯の寿命はさらに短くなるのですか?
歯を削るたびに、その歯は薄くなります。
初回の虫歯治療で少し削り、再治療でまた削り、神経の治療になってさらに削り——この積み重ねで、歯はどんどん薄くなっていきます。薄くなった歯に過剰な力がかかり続ければ、割れるのは時間の問題です。
歯の根が割れてしまうと、多くの場合は抜歯しか選択肢がありません。抜歯後は入れ歯・ブリッジ・インプラントのいずれかが必要になります。噛み合わせという根本原因を放置した結果が、治療の繰り返し→歯の薄化→破折→抜歯という流れを生み出しているのです。
噛み合わせ治療で、歯の寿命はどう変わりますか?
力が適切に分散されるようになることで、特定の歯への負担が減ります。その結果、詰め物やかぶせものが長持ちし、歯が割れるリスクが下がり、再治療の頻度が減ります。
京橋歯科医院では、矯正・詰め物・かぶせものの作り直しを含めた形で噛み合わせの治療を行っています。1本の歯を治すときも、常に「この歯に正しい力がかかるか」を確認しながら設計します。
「歯の治療が終わった」のではなく、「正しい力のかかり方ができる状態になった」ことが治療のゴールです。
ただ、「今は特に痛くないから」「まだ噛めているから」という方には、私たちの噛み合わせ治療の進め方は少し煩わしく感じるかもしれません。痛みが出る前に、歯が壊れる前に手を打つことに価値を感じていただける方にはご納得いただける治療だと思います。
治療を続ける中で感じた咬み合わせの重要性
歯科医師になったばかりの頃は、1本の歯を治すことに必死でした。レジンでの治療や銀歯の治療、神経の治療を行っていました。そこからセラミックの治療や、神経の治療をできるだけ精密に行うためにはどうすれば良いか考えていました。地方で働いていましたので入れ歯の治療も今よりは多く、逆にインプラントの治療はほとんどありませんでした。東京で働くようになり、セラミックの治療がとても増えました。同時にセラミックが欠けたり周辺の歯が欠けることを見るようになりました。先輩の歯科医師に聞くと「セラミックが強く当たらないように作ると良い」と言っていました。高額な治療であるセラミックが欠けると患者さんとトラブルになりやすいという理由でした。それを聞いた時に、根本的な解決にならないような気がしていました。
先日東京科学大学の論文で、「咬合性外傷は単独では骨吸収を起こさないが歯周炎を憎悪させる」という発表がありました。歯に強く力が掛かると歯肉の炎症が起きるということなのですが、歯肉の炎症は周辺のあごの骨を減らすことが知られていますので、行きつく先は抜歯になってしまうということです。
歯を抜くことになる原因で想像しやすいのはひどい虫歯だと思います。歯は真っ黒になってしまってヤリを持った虫歯菌が悪さをしている絵本を読んだ記憶がある人もいると思います。そして歯周病は日本の抜歯の原因の第一位です。
でもそれだけでは説明のつかないことが多いと思っている中で様々な学会に所属することになりました。そこで精密なかみ合わせの検査方法を覚えることができました。かみ合わせの検査をしてみると、患者さん本人が自覚していない異常がわかります。また、歯科医師が予想していなかった結果が出ることもあります。そうすると今まで「虫歯」「歯周病」の2大原因で考えていた治療がプラスで「かみ合わせの異常」という観点でも見るようになります。当然のことながら治療計画も変わるということです。
私が若い時代に治療をした患者さんには申し訳ないのですが、20代の私と30代の私と40代の私では治療方針が徐々に変化しています。その時その時は一生懸命治療したつもりです。ですが、現段階の治療はかみ合わせ無しでは考えられないためより精密になっていると思います。
よくあるご質問
Q1. 噛み合わせが悪いかどうか、自分で確認できますか?
完全な自己判断は難しいですが、「詰め物がよく外れる」「歯が繰り返し割れる・欠ける」「朝起きると顎が疲れている」などが繰り返し起きている場合は、歯科医院で噛み合わせの確認をされることをおすすめします。
Q2. 矯正をしないと噛み合わせは治せませんか?
矯正以外にも、詰め物やかぶせものの高さ・形を調整することで噛み合わせを整えられる場合があります。どの方法が適切かは噛み合わせの検査結果によります。まずはご相談ください。
Q3. 歯ぎしりも噛み合わせと関係しますか?
関係します。歯ぎしりは噛み合わせの問題が原因のひとつになることがあります。ナイトガード(マウスピース)で歯への負担を軽減しながら、根本的な噛み合わせの改善も検討することをおすすめします。
Q4. 保険診療で噛み合わせの相談はできますか?
個別の歯の高さ調整は保険診療内で対応できる場合がありますが、全体的な噛み合わせの診断・治療計画の作成は自費診療になります。まずはお気軽にご相談ください。
Q5. 子供の頃から歯並びが悪いのですが、今からでも噛み合わせ治療は意味がありますか?
あります。噛み合わせの問題は、放置するほど歯へのダメージが蓄積します。年齢に関わらず、噛み合わせを改善することで今後の歯の寿命を延ばすことができます。
中央区・京橋エリアからのアクセス
京橋歯科医院は、東京メトロ銀座線「京橋駅」より徒歩約3分、東京駅八重洲南口から徒歩約7分です。噛み合わせの診断・矯正・総合歯科治療を中央区・京橋エリアでお探しの方はお気軽にご相談ください。




