歯のコラム
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歯科治療はなぜ高い?
2025.11.15
治療費がかかる理由と、人生における治療のタイミングについて考えてみましょう
■ 歯科治療が高いと感じられる理由
歯科治療を検討するとき、多くの方が気にされるのが「治療費」です。
口コミにも「高い」という声はよく見られますし、
インターネットでは
・「セラミック1本◯万円」
・「インプラント1本△△万円」
といった情報が溢れています。
もちろん、同じ商品であれば安い方が良いです。
折込チラシを見て「今日は醤油がAスーパーの方が安い」「砂糖はBスーパーで買おう」と選ぶのと同じで、買い物であればそれは正しい判断だと思います。
しかし歯科治療に関しては“同じ商品”という概念はちょっと違うかもしれません。
症例も違えば、使う器材・材料・設備も違い、治療する側の技術・経験もまったく違います。
同じ「セラミック」「インプラント」という名前でも、実際に行われる治療内容は全く別物といったことも多いです。
人は“今の状態”が変わらないものだと考えてしまう
「とりあえず痛くないから」
「見た目が少し気になる程度だから」
こうして歯科治療を先延ばしにしてしまうことは本当によくあります。
昨日なんでもなかったんだから、今日も大丈夫。
きっと明日も大丈夫だろう。
これは人間の自然な性質ですし、悪いことではありません。
ただ、人間が少しずつ老化していくように、口の中も毎日少しずつ変化していきます。
・年齢を重ねると免疫力が落ちる
・歯周病リスクは上がる
・治療済みの歯は再発しやすい
・歯はすり減り、欠け、割れる
・銀歯の周囲は虫歯になりやすい
今日の状態が良くても、明日も良いとは限らないのが歯科治療の難しさです。
「今日が人生で一番治療費が高い日」かもしれない
私は患者さんにこうお話することがあります。
「今日が今までの人生において一番治療費が高い日です。」
もし歯がものすごく痛い患者さんが過去に戻れるなら、きっと歯を丁寧に磨くでしょう。
フロスも歯間ブラシも使って、うがい薬も使い、定期検診を欠かさず受けると思います。
虫歯になる前に予防していれば、今日の痛みも治療費も、きっとなかったからです。
これは歯に限ったことではありません。
つい食べ過ぎて太ってしまう。
ついつい飲み過ぎて二日酔いになる。
ついつい使いすぎて貯金が減ってしまう。
ダメだとわかっていることをやってしまうのは、小説、戯曲、随筆、映画、歌、などなど人生の歴史を見ると昔からある、誰にでもある“人間らしい”行動です。
だからこそ、完全な虫歯予防・歯周病予防というのは理想ではあるものの、現実的にはとても難しいのです。
そしてこの言葉にはもうひとつ意味があります。
「今日が、今後の人生で一番治療費が安い日になる」
です。
今治療することで、これ以上悪化するのを防ぐことができ、未来の治療費を大幅に抑えることができるかもしれませんし、患者さんといっしょにそうして行きたいと思っています。
治療費が高額になりやすい治療とは?
■ 1. インプラント
抜歯になった理由そのものが
・歯周病
・大きな虫歯
・噛み合わせ
・再治療の繰り返し
という“負債の積み重ね”です。昔歯科医院に通っていれば、治療を受けていれば(質の高い)、ご自身での日々のメンテナンスを見直していれば、防げたかもしれない治療です。だからこそ高度な再建治療が必要になります。
■ 2. 矯正
生まれつきの歯列不正・骨格の問題は自然には治りません。これはとてもアンラッキーなことかもしれません。
生まれつき歯並びが良い方もいるし乱れている方もいる。そして乱れていれば歯を失うリスクが高くなってしまいます。
ご本人は違和感をあまり感じていなくても放置すれば徐々に噛み合わせが崩れ、結果的に負担が増え、将来の治療費が上がります。また、口の機能の低下が起きてしまいますし、審美的に気になってくることも多いです。
■ 3. セラミック
“見た目”だけの治療と思われがちですが、本質は再発予防・耐久性・噛み合わせの精密さに関わる治療です。
保険診療の利点は「治療費が安い」「全国一律の治療費」ということです。これは歯科に限らず病院などの治療も同様です。時代劇でよるあるような「お金が無いから治療ができない。」といったことが無いようにするための国の施策です。かつて歯を失う人が多かった時代から国民皆保険が導入されることにより平均寿命は伸び、歯を失う人は減ってきました。
しかし、それでも現在の75歳の平均残存歯数は15本です。人間の歯はおやしらずを除くと28本ありますから約13本の歯が抜けてしまっているという調査結果があります。
これを解決するために予後の良い治療としてセラミックがあります。銀歯の治療はさまざまなデータがありますが平均で5年で再治療になっています。セラミックは30年で81%の生存率があるというデータもあり、長期的に使える治療法です。
人間の歯は必ず変化する
歯だけを単体で見れば、
「大切にすればずっと持つのでは?」と思うかもしれません。
しかし実際には、
・免疫は低下する
・歯周病リスクは上がる
・歯はすり減る
・咬合力が集中すると欠ける・割れる
・治療済みの歯は再発しやすい
口の中は「何もしなくても悪化する」方向に進んでいきます。
患者さんも医院も、この“悪化”にどう立ち向かうかという難問に日々戦っているといっても過言ではありません。
この二人三脚の姿勢というのがとても大切で、歯科医院側からすると患者さんの協力なくして達成することができない目標といえるでしょう。
「痛いときだけ治療したい」「歯科医院で検診しているから虫歯なんてもうできないはずだ。虫歯が出来たのは歯科医院の責任だ」「定期検診は受けたくない」「忙しいから歯みがきは適当でいい」といった姿勢ですと歯科医師ができることはあまりありません。
治療をしても短期でする再治療になってしまうからです。そしていずれ抜歯になってしまいます。抜歯にならないように声をかけ続けますが、患者さん自身にその気がなければ抜歯は避けられません。
抜歯になる可能性が高い歯の治療は本当にしなくてはいけないのでしょうか。医療費の無駄、歯科医師の治療時間の無駄、患者さんが治療を受ける無駄になってしまうでしょう。
名医による「全顎治療」という考え方
歯を1本ずつ治すのではなく、噛み合わせ・骨・筋肉・咀嚼機能を総合的に再構築する治療を「全顎治療」 といいます。
これは単なる修復ではなく、口腔機能の“再生”に近い治療かもしれません。
咬合が崩壊している方、再治療を繰り返し、部分補修では追いつかない方には、この全顎治療が必要になることがあります。
当然ながら作業量・診断量・技術量は大きく、費用も高額になります。治療にかかる時間も期間もかかります。また事前の検査や検査結果を診断する時間もかかるため、自費治療でしっかりと治したいという意思が必要な治療です。
歯科医師は学会や研究会、セミナー、本、などで勉強をするのですが、全顎的な治療は非常に難易度が高い治療法だと思います。
私もいくつかの学会や研究会に所属しています。
全顎的な治療を行うための勉強は、日本臨床歯科学会、エクセプショナル デンティストリー研究会などで行いました。
これらのセミナーでは著名な歯科医師による症例発表が行われるのですが、治療前の状態と治療後の状態について説明があります。非常に悪い状態から機能も見た目も回復した状態に変化するのは、高い技術や高額な治療費、長期的な治療期間、多くの治療回数も必要ですが、それを行いたいと希望した患者さんの治療に対する意欲が必須といえるでしょう。
保険診療の役割
保険診療は非常に優れた制度で、誰もが最低限の治療を受けられるという点で素晴らしい仕組みです。
しかし、
・使用できる材料の制限
・工程の制限
・診断・治療の自由度の制限
これらがあるため、高度な精密治療や再発予防を徹底した治療は保険では行えません。
特に、根管治療・セラミック・インプラント・噛み合わせは技術差が大きく結果に直結します。
簡単に説明すると
根管治療 虫歯が深くまで進んでしまって歯が痛くなった状態の治療
セラミック 適切な箇所に適切な種類の適切な厚さのセラミックを入れる治療
インプラント 残念ながら抜歯になってしまった箇所に入れる人工の歯
かみ合わせ 生まれつき、もしくは治療を繰り返すことによって、正しい位置に歯がないため力が均等にかかっていない状態の治療
になります。歯学部を卒業した後で勉強をする必要があるため、正しい技術や知識がないと治療の成功率に大きな影響がでてしまうと言えるでしょう。
高い治療が“結果的に”一番安くなる理由
短期的に高額な治療でも、
・再発しにくい
・耐久性が高い
・噛み合わせが整う
・咀嚼能力を維持できる
・見た目が改善する
・長期的な治療回数が少ない
これらを考えると、トータルでは安く済む ことが多くあります。
これは“治療の質がコストを下げる”という典型例です。
また日常生活の不便さや、治療に通わなくてはいけない手間や時間、痛いという不快な時間、見た目が悪い、口臭がある、という心理的な辛さなど値段は付けらない価値についても考えると果たして1回の治療費を安くするということだけで治療を考えるべきかどうか、一度考える必要があるかもしれません。
未来から見た治療費の考え方
10年後、20年後の自分の口がどうなっているか。
それを決めるのは “今日の治療選択” です。
・骨量の変化
・噛み合わせの悪化
・清掃性の低下
・歯列の変化
・再治療の蓄積
これらは残念ながら時間とともに進行してしまいます。
多くの人は大きなトラブルが起きた時に身に染みて自分の過去の歯に対する行いについて考えます。あの時ちゃんと治療をしておけばよかった。あの時ちゃんと定期検診を受けておけばよかった。毎日ちゃんと歯を磨けばよかった。その他のケアをすればよかった。という声は診療室で聞くことでもあります。
治療費そのものではなく「価値」で選ぶ時代
治療費を比較することは悪いことではありません。
しかし、その裏にある
・技術
・診断
・設備
・経験
・予防歯科への取り組み
・将来どんな口の中にしたいか
これらを理解した上で、自分の生涯にとって価値のある治療 を選ぶことが大切です。
将来の生活の質、咀嚼能力、見た目、健康を考えると、歯科治療は“贅沢品”ではなく人生に対する投資ではないかなと思います。
京橋歯科医院での取り組み
京橋歯科医院で行っている治療について最後にご紹介いたします。
・マイクロスコープを使った治療
・セラミック治療
・精密根管治療
・マイクロサージェリー
顕微鏡を使うことで治療する箇所を大きく拡大することができます。治療の精度が上がる治療法です。
CEREC(セレック)
セレックシステムはセラミック治療を当日終わらせることが出来る治療法です。歯を削った瞬間の歯の表面は理論的には細菌がゼロ~きわめて少ない状態です。この歯に対してすぐにセラミックを入れることにより内部の細菌が無い状態となり再発リスクを抑えることができます。
総合診療~全額治療~歯科ドック
既に歯を失っている方や複数の歯に問題がある方、歯列不正のある方はまず歯科ドックを行うことをおすすめしています。お口の状態を確認し、治療計画を立て、患者さんのご希望を聞きながら全体的な治療を行っていきます。
矯正
CERECシステムは口腔内スキャナーを使うという特徴があります。この口腔内スキャナーは歯の状態をデータにすることで矯正治療を進めることができます。特にマウスピース矯正には口腔内スキャナーが必要です。
当院は東京駅から近い京橋にあります。治療をお考えの方はお気軽にお問い合わせください。公式LINEアカウントからもご相談ができます。

