歯のコラム
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歯科医師が難しいと思う症例は?
2026.03.13
どんな治療が難しいと思いますか?
「なんか歯が痛いな?」「歯茎から血が出るな」「銀歯のかぶせものが取れてしまったな」と言ったときに歯科医院での診察を考える方が多いと思います。
歯科医院で行われている治療は色々なものがありますが、「インプラント手術」「審美目的のセラミック治療」などは難しい治療で費用も高いのではないかと思っても不思議ではありません。「治療に行くのが怖くて口の中が全体的にボロボロになってしまった。歯医者さんに叱られるのではないか」と考える人もいるでしょう。治療費が高くて、痛くて辛い治療が続くんじゃないかと心配されることもあるかもしれません。
確かに全体的な口の治療というのは「総合治療」「全顎的治療」などと呼ばれて非常に困難なケースも少なくありません。長い期間に渡って異常が起きているわけですので、短期間で治すというのは非常に難しいと言えます。
こういったケースでは元々の咬み合わせがどうだったかわからなくなっていることも多く、最終的なゴールの設定をしてから治療にとりかかるのですが、ゴール設定が非常に難しいです。事前の検査、治療計画の作成と歯科医師の技量が問われる治療です。歯科医師の所属する学会や研究会、勉強会などでは症例発表会が行われているのですが、全顎的な治療についての発表が多いです。
ここまで読まれた方は、「ああやっぱり治療せずに放置してしまうと大事件になってしまうんだな」と思われたかもしれません。実はこういったケースは症例発表をしている歯科医師であれば治療はできるわけで、診察を受けた歯科医師が治療できなくても治療ができる歯科医師に紹介をすることで治療をすることはできます。
治せない患者さんはどんな人?
とんちのような理由
一休さんで屏風の中の虎を捕まえるように言われるお話があります。昔話ですのでご存じの方も多いかもしれません。一休さんは将軍から屏風から虎が出て来て悪さをするので虎を捕まえてくれと頼まれます。一休さんは虎を捕まえることはできるから屏風から虎を出してくれと言います。もちろん虎を屏風から出すことができないため将軍は感服するという内容です。
歯科治療もとんちのような話があります。治せない患者さんというのはいくつかありますが、そのうちの一つは「治療に来ない患者さん」です。来ないわけですから治すことができません。口の異常は自然に治ることが無いものが多いです。予約を取っても当日に来ない人がいます。ちゃんと治療に来る人からしたらそんな人いるの?と思うかもしれません。歯が痛い、かぶせものが取れた、歯肉が痛い、出血している、といった症状があるため電話やネット予約をしているのにも関わらず、キャンセルの連絡があって、来なくなってしまう方は多いです。また時間になっても来ないので電話やLINEをしても反応が無い方もいます。無断キャンセルというのは歯科業界における非常に重要な問題ですのでしないようにしてもらいたいと思います。治療の準備をして、歯科医師や歯科衛生士、その他スタッフが待機しているわけですから、無断キャンセルになると人件費をはじめとする様々なコストが無駄になってしまいます。
治してもまた状態を悪化させてしまうこととは?
歯科治療は大きく分けると、虫歯、歯周病、かみ合わせが原因のトラブルが多いです。虫歯については治療した箇所を継続的に見ていく必要があります。歯周病は原因の細菌の継続的な除去が必要です。そしてこれらは生活習慣も関連しているため、生活習慣の確認も重要です。かみ合わせについては矯正治療を行うケースが多いですが、矯正が終わった後もかみ合わせの確認が必要です。放置すると後戻りしてしまうこと多いからです。
つまり、治療後は定期検診が必須だということです。治療が終わったあと「もう来なくて大丈夫です」ということはほぼありません。しかしながら、治療、特に虫歯治療が終わった後に通院をやめてしまう方は多いです。数か月、数年後にまた歯のトラブルが起きてしまい、何度も治療を繰り返すことで抜歯のリスクが高まり、口腔全体の機能が低下していきます。
歯科医師が本当に難しいと感じる治療とは?
咬合に問題が起きてしまったケース
保険診療での治療は長期的な予後が良いかという観点よりも治療費が比較的抑えられているということが重要視されることが多いです。不景気な日本ですから出費を抑えることは非常に重要ですのでそういった治療を選ばれることは悪いことではありません。ただ、歯の状態が悪くなるかもしれないということは治療の際に心に留めておくと良いと思います。
治療については様々な調査結果、論文などが発表されています。簡単に言えば保険診療で虫歯治療を行った場合、数年から十数年で抜歯になるリスクがあります。現在の75歳の歯の残っている本数は15本です。おやしらずを除くと歯は28本ありますから13本の歯が抜歯になっているということです。
こういった場合、治療途中の段階で銀歯のつめものやかぶせものの治療が必要ですが、これらの治療を繰り返している中で元々のかみ合わせから変化してしまうことがあります。簡単に言えば、元の歯よりもつめものやかぶせものが高かったり、低かったりすることで歯に掛かる力が変わっていくということです。力が強くかかると歯は割れたり欠けたり折れたりするため抜歯になる可能性があります。新たに1本だけ治療しようとしても正しい歯の高さがわからないため乱れたかみ合わせに合わせて治療することになってしまいます。しっかりと治療をしようとすると、歯の型を取ってかみ合わせを再現するような器具に型を付けて正しいかみ合わせを見つけることが必要になります。そしてその後全てのつめものやかぶせものを外して仮歯にして正しいかみ合わせを再現した上で、しばらく使ってもらい、その後問題が無いことを確認した上でセラミックのつめものやかぶせものに変えていくという治療になります。とても難易度が高く、治療の回数も多く、治療期間も長く、治療費も高額になります。
審美目的で必要のない治療をしてしまったケース
審美治療というのは簡単に言えば見た目を綺麗にする治療です。患者さんのイメージでは見える歯をセラミックにする治療だと思っているかもしれません。これは間違いではありませんが、ホワイトニングや矯正、ラミネートベニアなど、セラミック治療以外にも色々と方法があります。これらの治療をどのように行っていくかということが大切なのですが、「すぐに」「できるだけ安く」「回数を少なく」治療したいと考える患者さんがいても不思議ではありません。できればそういった治療の方が負担が少ないからです。一方で、治療計画がしっかりと立てられないまま歯を抜いてセラミックのブリッジにしたり、歯の向きを考えないでセラミックのかぶせものの治療を提案する歯科医師もいます。両者の目的が同じなので短期的にはきれいな歯になるのですが、短ければ数か月、長いと数年後に異常が起きることがあります。
この場合は既に高額な治療が行われているため、すぐにセラミックを壊して治療をやり直すということについて患者さんの同意が得られないことがあります。歯科医師側も、以前治療した他院の歯科医師の治療方針に問題があるのではと思ったとしても、患者さんに伝えることが非常に難しいです。患者さんと以前治療した歯科医師の間でトラブルになったり、歯科医院同士がトラブルになったりすることがあるためです。既に以前支払った治療費については諦めて、新たに治療をするということであれば治療法はあるのですが、適切な治療が行われていれば必要のない治療だったかもしれません。
治療方針について(京橋歯科医院の考え方)
まずは定期検診を受けるかどうかを決めましょう
定期検診を受けたくないという方の治療は長期的に見た時に非常に困難です。定期検診の重要性についてお伝えしますので、今まで定期検診を受けてこなかったという生活習慣を変えて、10年後も歯のトラブルが起きないようにいっしょに頑張っていきましょう。
かみ合わせの重要性について考えてみましょう
虫歯や歯周病の様にわかりやすい症状がなくてもかみ合わせの異常というのは長期的にとてもリスクが高い状態です。矯正やつめものやかぶせものの作り直しということについても検討してみてください。平地に家を建てるのと、斜面に家を建てるのではリスクが違うと考えるとわかりやすいかもしれません。
検査をうけましょう
状態が悪くなっている場合は治療の前に検査が必要です。家を建てる時に設計図無しで立てることはありません。事前の検査、治療計画の作成、これらを踏まえたうえで治療を受けるかどうか決めるのが良いでしょう。不安を感じたら治療計画について事前に確認されるのが良いと思います。
治療計画と治療費について考えましょう
治療計画はいくつか作ることができます。全てしっかりと治療をする方法、費用を考えて重要度の高い治療から行う方法、など様々です。優先度の低い治療についても治療がいずれ必要だということを知っておくことが重要です。死ぬまで歯は使うわけですから、長期的な視野での治療を考えると良いでしょう。数年かけて全体の治療をすることは珍しいことではありません。矯正治療が数年かかるというのは良く知られている話だと思いますのでイメージしやすいかと思います。
10年後の歯を守るための選択
私たちはできれば10年以上歯のトラブルが無い状態にしたいと思っています。20年、30年先までトラブルが無い人生を想像したらどうでしょうか?幸せの一つの形ではないでしょうか。数か月、数年ごとに歯が痛くなって治療を繰り返していく、そんな心配のない状態は、仕事や趣味、その他人生の色々なイベントにおいてとても良いことでは無いかと思っています。
短期的な審美治療というのは私たちは行っていません。トラブルになりやすいということもありますし、治療をされた方もがっかりされるだろうと思うからです。症例によっては簡単に終わらないこともありますが、通院さえしていただければリスクの低い歯の状態にすることはできると思います。
それは歯科医師だけが行うわけではなく、患者さんご本人の努力や心構えも非常に重要です。一緒により良いお口の健康のため頑張っていきましょう。
京橋歯科医院は東京駅、京橋駅、宝町駅から徒歩で通いやすい場所にあります。各駅からの行き方が分かりにくい場合はお電話やLINEでご案内しています。お気軽にご連絡ください。
よくあるご質問(Q&A)
Q1:技術的に難しい症例とはどんな状態ですか?
A:生まれつきのあごの骨の状態、既にたくさんの治療を行ったことでかみ合わせに異常が起きている状態、抜かなくてはいけない歯を抜かなかったことによる骨の状態が悪くなってしまっている状態などがあります。1本だけ治療が必要というよりは口腔全体の治療が必要というケースが多いと思います。
Q2:忙しくて通えない場合はどうなりますか?
A:歯のことを考えると治療計画を優先した治療と継続的な定期検診が必要です。忙しくて通えないということですと非常にリスクが高い状態です。仕事の休みの日に通える歯科医院、早朝や深夜診療を行っている歯科医院など通いやすい歯科医院での治療を検討されると良いかと思います。
Q3:歯磨きだけでは足りませんか?
A:元々の歯並びが良い、今まで虫歯や歯周病になったことがない、などといった状態でなければ歯みがきの他にフロスや歯間ブラシ、フッ素入りの歯みがき粉やうがい薬、殺菌効果のあるうがい薬、キシリトールなどが必要なことが多いです。
Q4:一度治療したら安心ではないのですか?
A:定期検診は歯周病の予防や虫歯の早期発見、その他の歯の異常の早期発見に非常に有効です。定期検診なしでは治療が終わっても再治療になるリスクが高いです。定期検診を受けるという生活習慣の改善は歯の健康の第一歩ですので是非受けることをおすすめいたします。
Q5:今日からできることは何ですか?
A:思い立ったが吉日。まずは歯科医院に検診に行きましょう。問題が見つかるかもしれません。そして治療の途中中断や定期検診の未受診、無断キャンセルなどをやめようと固く心に誓いましょう。歯のトラブルを治すのは歯科医院ではありません。ご自身の気持ち一つです。仮に歯科検診を3か月に1回受けたとしても1/2160時間。歯科医院が関われる時間はとても短いです。身体の異常と同じく歯の異常も自分で予防するという意識を持てたら、それは既に口の健康を守る第一歩といっても過言ではありません。

